特集

知れば知るほど! なごや福祉用具プラザの役割

介護ロボット普及事業への取り組み

 なごや福祉用具プラザは、社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団が行っている総合的なリハビリテーションサービスのうち、障害のある方や、身体機能の低下した高齢の方の自立を支援し、介護者の負担を軽減するため福祉用具のご相談や、介護に関する実習や研修を行っている施設です。障害や介護に係わる誰もが豊かな生活を送っていただくための情報を発信する拠点でもあります。
 なごや福祉用具プラザの主な業務は、〈介護実習・普及センター〉〈テクノエイド機能(仮称)〉〈介護ロボット普及モデル事業〉の3つに分けられます。
 今回はその中のひとつ、〈介護ロボット普及モデル事業〉への取り組みをご紹介します。

【プラザ職員に聞いてみました】国を挙げて介護ロボット開発に取り組んでいます

電動簡易移乗器 i-PAL

ロボットアシストカートRT.1

シルエット見守りセンサ

シルエット見守りセンサ

 これから深刻になりつつある問題に国を挙げて取り組んでいるのが現在の状況です。この大きな取り組みの発想はとてもシンプルです。少子高齢化社会で支える側の人口が減少してきています。これまでなら高齢者や要介護者1人を3人程度の生産年齢人口で支えていましたが、将来はもっと少ない人数で支えていかなければなりません。その減った分のところをロボットで補いましょうというのが一番簡単な説明になります。

国はどんな支援をしているのでしょうか?

 まず経済産業省が開発のための支援をしています。そして、それとは別に厚生労働省が普及のための支援に取り組んでいます。介護という側面を考えたとき、開発のみに注力するようなやり方ではどうしても頭打ちになってしまいがちです。「実際の問題として、ニーズとは別に技術先行で機器を作ったけれども、出来上がった機器を普及させるにはどうすればいいか」というような相談を受けることが何度もありました。そうした反省もあって、現状では普及を見据えて、経済産業省と厚生労働省が一体となって進めているようなやり方に変わってきています。現在は、独立行政法人「日本医療研究開発機構(AMED)」が経済産業省の事業を引き継いで「ロボット介護機器開発・導入促進事業」として進めています。

開発メーカーと介護の現場、両者をつなぎ合わせるのが、なごや福祉用具プラザです

市販化されているロボットも出てきていますが、実際に介護や福祉の現場でどれくらい役に立つロボットが開発されてきているのでしょうか?

 実はロボットが正常に動作がするか、介護の現場で役立てるかどうかを検証するのが喫緊の課題です。実際の介護や福祉の現場としては、人であっても個性があり能力の違いがあり、また必要とされる側も個々に事情が異なり個別性が高く多様性もあります。そういった環境で使えるロボットを開発するのは大変難しいことです。ロボットを使う人のこともサービスを受ける人についても、現場も開発者側もお互いに知らないことばかりです。まだまだ情報が不足しているといえます。しっかり使える介護ロボットを開発するという観点では、まだ初期段階の始まったばかりといってもいいでしょう。しかし、開発された機器を実際に使いながら課題を整理し片づけていけば、やがて今抱えている問題が解決していくはずです。開発メーカーと介護の現場、両方をつなぎ合わせる役割として私たちが果たさなければならないことがたくさんあると考えています。

導入実績を積み上げていくことが何より重要

昨年も実際に機器を導入してワークショップなどを行いました。普及に向けての一番の課題はどんなことだと思いますか?

 実績を積んでいくことが何より重要ではないかと思います。介護の現場では、万が一でも危険性が考えられる機器について導入することはできません。それを乗り越えるためにはしっかりと安全性を確保し、エンドユーザーに対する実績をたくさん積んでいくしかないと思います。経済産業省からは開発、厚生労働省からは普及について支援が出ていますが、そういった状況で何が足りないかといえば事例が不足しています。時間はかかるかもしれませんが実際に実績を積んでいくということが一番大事なのではないかと考えています。

平成28年度の取り組みとしてはどんなものになりますか?

 今年度は、介護ロボットを使うための「介護ロボットを活用した介護技術開発モデル事業」ということがあります。導入機器の有効性を評価し、とにかく使ってみてその中から良かった点や悪かった点、どんな人に役立ったかというデータの蓄積をやりなさいということが指針になっています。単なる開発だけでなく、導入する施設で効率的な活用方法を構築すること、介護ロボットを活用した介護技術の開発までが目的です。それから、これまで取り組んできました「介護ロボット普及モデル事業」も継続します。昨年は施設の見守り機器でしたが、今年度は在宅の見守り、排泄支援、移乗支援機器についてやっていきます。どちらの場合も、これまでと同じように福祉施設と開発メーカーと、私たち仲介者がチームとなり、機器を理解するための勉強会、それが終わったところで実際に施設に機器を持ち込んでそれを使う前と使った後の結果がどうだったかを報告します。今年は機器を使うためのノウハウの蓄積が指針に入っていることからも、昨年度のモデル事業に比べると細かな計画書を作成しています。綿密な計画を立てて機器の効果測定、使い方の評価を中心に進めていきます。

皆さんに関心を持ってもらうことが何よりも大事なこと

とにかく使ってみて実績を集めていくということが大事なんですね。

 現在は、現場へロボットを持ち込んだときの課題を解決していっていますが、今後進めていくうえで大事なことは、エンドユーザーである一般の方々のロボットや機器への関心ではないかと思います。今はまだ、自分たちの問題じゃないと思っているかもしれませんが、遠くない将来、重要になってくるのではないかと思います。新しい機器を使った、新しい介護のスタイルを作っていくことがどんどんと進んでいきます。これまで現場でアンケートをとった結果を見ると、使ってみた方々から「介護ロボットへは気を使わなくていい」という意見がたくさん寄せられています。そういった点からもロボットによる介護の可能性は非常に有望ではないかと思います。自分には関係ないと思わずに、ぜひ手にとって触ってみて下さい。まずは、なごや福祉用具プラザに来て、こんなものがありますよ、こんなふうに使えますよ、ということを体験してほしいです。ささいなきっかけで、解決できないと思っていた問題を解決するための糸口というものが見つかるかもしれません。そうしたことを積み重ねて情報を集めていくことが、介護ロボットの普及へとつながっていくのだと思います。ぜひ気軽に見に来て機器を手にとってお話をして下さい。介護ロボットやいろいろな機器に関心を持ってもらうことがとても大事なことだと思っています。

リハビリセンターロボット体験会の様子

介護施設での移乗支援機器の活用

福祉用具・介護ロボットの普及をリハビリテーションセンターと一体となって取り組むことの意味

 なごや福祉用具プラザは、名古屋市総合リハビリテーションセンターで医療的訓練を終えた方が地域に戻っていく時に、住み慣れた地域で長く生活できるための支援をしています。こうした取り組みは、医療から地域まで資源がそろう名古屋市総合リハビリテーションセンターだからこその強みであり役割でもあります。この仕組みは、医療、介護、福祉の多くの専門のスタッフによって支えられ、総合リハビリの提供には欠かせません。なごや福祉用具プラザも日々、名古屋市総合リハビリテーションセンターと協力しながら、医療から地域まで、切れ目の無い支援ができるように心掛けています。福祉用具・介護ロボットの分野においても、医療にしかできないこと、福祉にしかできないこと、それぞれの強みを生かし、よりその人らしい生活の実現に寄与できるように一丸となって、研究開発、普及モデル事業に取り組んでいきます。

平成27年度の取り組みを振り返って
事例 見守りシステム導入支援 ワークショップ

 なごや福祉用具プラザでは、平成25年度から介護ロボット普及モデル事業を実施しています。年間を通して、介護ロボットの展示会や体験会など数多くのイベントを開催していますが、その中でも、介護ロボットの現場への試用導入とその実績を受けてのワークショップは重要な取り組みです。福祉用具・介護ロボットを普及させるためのワークショップは平成26年度から行っていますが、平成27年度は事前に参加者お互いの職域や、試用導入される機器についての理解を深める場を設け、早い段階から情報共有しやすい環境を作り、より内容の濃いワークショップができるように工夫しました。

ICF学習会の実施

 試用導入を行う前に、開発メーカー、介護現場職員、行政職員など、ワークショップに関連する関係者を対象にICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)学習会を開催しました。ICFを用いたアセスメントの考え方を学習することで、福祉用具とそれをめぐる人の状況を整理し、機器の開発やそれぞれの職域を理解することに役立ちました。

 「ICF」は2001年に制定され、正式名称は「生活機能・障害・健康の国際分類」といいます。障害に関することや、健康に関することなどを、約1,500 の項目に分類し、それらが【図1】のように複雑に絡み合って相互作用していると考えたものです。

ICF学習会参加者のアンケート結果から

  • 「目的が不明確な開発のみに ICFが必要なのかと思ったが、使う人を知るのに有用だと感じた」
  • 「利用者の生活環境や心身状況をヒアリングするときに生かしていこうと思う」
モニター報告と第1回ワークショップ

[ 2015年12月9日開催 ]

 見守り支援機器についてワークショップ開催のひと月前に試用導入を実施し、それについてのモニター報告を実施。それをもとにして 1回目の導入支援ワークショップを開催しました。

モニター報告と第2回ワークショップ

[ 2016年1月29日開催 ]

 第1回ワークショップから、ブレインストーミング(注1)を実施し、親和図法(注2)によって情報を「みえる化」し、立場の異なる職種の人でも情報共有がしやすいように工夫しました。

注1:ブレインストーミングは、集団で新たなアイデアを生み出すための方法です。お互いの意見を聞きながら自由な発想で発言します。

注2:親和図法は、ブレインストーミングなどによって得られた情報を、構造化し整理することで、問題解決に結びつけるための方法です。

ワークショップ参加者のアンケート結果から

すべての参加者が「介護ロボットの導入の際にワークショップが有効」と回答

 開発段階からニーズに寄り添った機器の開発支援が行えるようにするという目的、また利活用の提案力の向上、活用事例の蓄積という目的をもって臨んだ平成27年度の計画でしたが一定の評価が得られたのではないかと考えています。開発の直接支援には至っていませんが、開発者が介護現場の様子を理解することや現場職員と話し合える機会を作ったことで実際のニーズに触れる機会が増えました。

平成27年度介護ロボット普及モデル事業
4月
  • 瑞穂区内の地域資源を知ろう! 介護ロボット体験会(介護支援専門員研修)
5月
  • 国際福祉健康産業展ウェルフェア2015 福祉用具・介護ロボットの展示、体験
6月
  • ロボット関連事業報告会
8月
  • ロボットプログラミングワークショップ 子供向けのプログラミング体験型講座 保護者向けの福祉用具・介護ロボット体験会
  • ふれ愛納涼まつり 福祉用具・介護ロボットの展示、体験
9月
  • 中部介護者教室
  • ICF学習会
  • 昭和区 認知症カフェ 福祉用具・介護ロボットの展示
10月
  • 施設訪問 戸田川グリーンヴィレッジ 介護ロボットデモンストレーション、体験
  • 施設訪問 なごや福祉施設協会 福祉用具・介護ロボットの紹介、体験
11月
  • 施設訪問 なごやかハウス野跡 介護ロボットデモンストレーション、体験
  • 施設訪問 戸田川グリーンヴィレッジ 介護ロボット導入、取扱説明
  • みずほ介護フェスタ’15 福祉用具・介護ロボットの展示、体験
  • 介護ロボット普及モデル事業中間報告会
  • 兵庫県立福祉のまちづくり研究所視察
  • シーズニーズマッチング交流会2015
12月
  • 施設訪問 なごやかハウス野跡 介護ロボット導入、取扱説明
  • 昭和区認知症講演会 福祉用具・介護ロボットの展示
  • 導入支援ワークショップ①
  • 体験研修会 移動支援機器(屋外型)
1月
  • 施設訪問 名古屋市総合リハビリテーションセンター介護ロボット導入、取扱説明
  • ロボットプログラミングワークショップ 子供向けのプログラミング体験型講座 保護者向けの福祉用具・介護ロボット体験会
  • デモンストレーション 自立支援機器の説明、体験
  • 施設訪問 なごや福祉施設協会 福祉用具・介護ロボットの紹介、体験
  • 導入支援ワークショップ②
2月
  • デモンストレーション 見守り支援の説明、体験
  • デモンストレーション 排泄支援機器の説明、会見
  • 導入支援ワークショップ③
  • 福祉用具・介護ロボット展示&体験会
  • 第5回ICFシンポジウム
  • 福祉用具等研修会視察
  • 導入支援ワークショップ④
3月
  • 介護ロボット普及モデル事業報告会
  • 福祉用具を使った起居・移乗講座