事業団/プラザレポート

第1回 介護ロボット等取り組み連絡会を開催

 社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団は、去る6月13日、「第1回名古屋市総合リハビリテーション事業団 介護ロボット等取り組み連絡会」を開催しました。「介護ロボット等取り組み連絡会」は、研究の最先端である大学、介護ロボット開発メーカー、介護・福祉施設、行政機関、名古屋市総合リハビリテーション事業団の関係者が一堂に集まり、意見交換や情報共有する場として発足したものです。名古屋工業大学佐野明人教授、(株)今仙電機製作所、キング通信工業(株)、名古屋市健康福祉局高齢福祉部高齢福祉課、健康福祉局障害福祉部障害企画課それぞれの担当者、また、昨年度の「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業」でもお世話になった、(福)なごや福祉施設協会なごやかハウス野跡、(福)むつみ福祉会中区障害者基幹相談支援センターからもご出席いただき、第一部「ACSIVEの取り組みの紹介」、第二部「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業の紹介」をテーマに、発表者と意見交換を行いました。

第1回名古屋市総合リハビリテーション事業団 介護ロボット等取り組み連絡会 メンバー(敬称略)
区分 氏名 所属
学識経験者 佐野 明人 名古屋工業大学教授
社会福祉関係者 川原めぐみ (福)なごや福祉施設協会なごやかハウス野跡ケア統括長
仲  一幸 (福)むつみ福祉会中区障害者基幹相談支援センター管理者
開発企業関係者 鈴木 光久 (株)今仙電機製作所グローバル開発センター開発部
豊橋技術科学大学リーディング大学院客員准教授
吉村 真人 キング通信工業(株)営業統括本部事業開発課係長
行政関係者 筧  賢二 健康福祉局高齢福祉部高齢福祉課在宅福祉係長
小田 和志 健康福祉局障害福祉部障害企画課更生係長
(福)名古屋市総合リハビリテーション事業団
ワーキンググループ代表者
小川 鉄男 名古屋市総合リハビリテーションセンター 第1リハビリテーション部長
石黒 正樹 名古屋市総合リハビリテーションセンター理学療法士
佐藤  茂 名古屋市総合リハビリテーションセンター看護師
長束 晶夫 なごや福祉用具プラザケースワーカー
アドバイザー 高柳 泰二 名古屋市総合リハビリテーションセンター総合相談室長
根井さき子 名古屋市総合リハビリテーションセンター看護部長
事務局 鳥山みち子 名古屋市総合リハビリテーションセンター総務部長
萩原 康仁 名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院参事
日比野 新 名古屋市総合リハビリテーションセンター企画研究室主幹
冨板  充 なごや福祉用具プラザ作業療法士

 当日は、名古屋市総合リハビリテーション事業団 企画研究室の日比野新が司会を務め、介護ロボット活用の取り組みの紹介、意見交換を行いました。はじめに、事務局の名古屋市総合リハビリテーション事業団 総務部長 鳥山みち子から、連絡会の立ち上げの背景と目的について「大学、メーカー、介護現場の情報共有に加え、学部の学識経験者、製作者、活用現場、また、行政、そういった幅広い分野の方々からご意見をいただきながら、活発な議論ができる場としたい」と説明しました。
 第一部は、佐野明人教授から「ACSIVE活用の取り組みと課題〜ロボット開発以降の活用を考える〜」として基調講演が行われました。ACSIVEの原理のほか、実際の利用者の声や、明らかになった問題点などの紹介がありました。続き、名古屋市総合リハビリテーション事業団理学療法科 石黒正樹から「要支援脳卒中者に対するACSIVE活用-歩行計測・満足度調査からみえたこと-」として、筋力や動作の特徴など、身体的な側面からみた考察と課題を発表しました。

名古屋市総合リハビリテーションセンター総務部長  鳥山みち子
ACSIVE活用の取り組みと課題 〜ロボット開発以降の活用を考える

 「ACSIVE」は、サーボもバッテリーも必要のない無動力歩行支援機です。「受動歩行」という原理とバネの弾性力を利用して、足の動きを支援します。「受動歩行」とは、2足で歩行するときに自然と生じる「物理(自然)現象」で、足の付け根、膝を軸とする2重の振り子運動を利用して少ないエネルギーで効率よく歩く方式の歩行のことです。緩やかな下り坂では、重力を利用して動力のない歩行装置でも延々と歩くことができるそうです。ACSIVEは、この受動歩行の原理に、バネを組み合わせ、装着した足が後ろに引かれる際にバネが縮められ、次にバネが伸び、足の振り出しに使われる仕組みです。使用者の体重と筋力を利用しているため人間本来の動きに近く、特別な訓練をする必要もなく、すぐに利用できるメリットがあります。主に、片麻痺の方を想定して設計されており、2014年から販売され、1,500台もの販売実績があります。
 実際に使用した人の事例も紹介されました。
 自然に近い支援機器のため、義足のアスリートが義足の外側に装着して利用するなど想定以外の使われ方の例もあり、今後の普及が期待されます。
 問題点として、人によってはアシストを感じない場合があること、装着の問題(特に片麻痺の人)、女性のトイレで脱着に時間がかかる問題などが挙げられました。
 また、今後の可能性として、ACSIVEを手軽に使えるようにしたもの、歩行支援機aLQの紹介がありました。
 ACSIVEは、今夏、名古屋市科学館で開催される特別展「ロボットってなんだろう?」でも展示される予定です。

ACSIVE

歩行支援機「aLQ」

ACSIVE活用に向けた利用者の意向〜満足度調査から見えたこと〜

 回復期を経て症状、障害の状態が安定したあと、地域で生活している生活期脳卒中者は、筋力・体力・歩行能力などを維持向上させ、社会参加の促進が求められます。10名を対象にACSIVEを使用し、即時的な効果と使用満足度を評価しました。結果、ACSIVEを装着することで、歩幅・股関節屈曲角度は増加し、自覚的な歩行改善は、6名が「改善」、4名が「変化しない」となりました。「変化しない」とした症例は、使用による期待が大きく、正しい効果・使用方法の情報提供が必要と考えられました。こうした上で、導入には理学療法士の効果判断や効果的な使用に関する情報を使用者に届けることが重要であること、また、使用効果がある遊脚期だけではなく、立脚期への影響や膝関節角度の歩容変化を捉えることが、適応を考える上で重要とされました。

介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業(最終報告)

 第二部は、なごや福祉用具プラザケースワーカー 長束晶夫から「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業(最終報告)」が行われ、協力者であるなごやかハウス野跡 ケア統括長 川原めぐみさん、名古屋市総合リハビリテーションセンター看護師 佐藤茂、開発メーカーであるキング通信工業(株)吉村真人さんから意見をいただきました。

「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業」への取り組み

 少子高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護従事者の不足が社会問題となりつつある中、ロボット技術を活用した高齢者の自立支援、介護従事者の負担軽減が期待されています。名古屋市総合リハビリテーション事業団では、平成26年度から複数の見守り支援機器の介護施設および障害者支援施設におけるモニター調査を行いまいた。その取り組みの中から導入施設の介護業務上の課題と機器の果たすべき役割が明らかになったことから、抽出された課題に基づき、見守り支援機器の導入及び評価をなごやかハウス野跡と名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院で行うこととしました。

(福)なごや福祉施設協会 なごやかハウス野跡ケア統括長

川原 めぐみさん

 シルエット見守りセンサは、スマートフォンやタブレット端末で操作するため、年配の職員には拒否反応がありました。使い始めて、1年近くになり、かなり慣れてきて使えるようになってきました。メーカーからは、リーダーとなる職員に詳しく使用方法を説明していただき、施設内で伝達して使うことができました。

名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院看護師

佐藤 茂

 導入当初は、無線LANの影響もあり、画面が消えてしまうことがありました。不具合が出たときにどう対処していいのかわからず、説明書も読めなくて対応に困りました。機能が周知されていくにつれ、今では、なくてはならない機器になっています。

キング通信工業(株)営業統括本部事業開発課係長

吉村 真人さん

 社内でも、モノを提供して終わり、という商品ではなく、説明と理解が重要と認識し、徹底しています。今回アセスメントに活用したいとのご意見をいただき、アセスメントに活用できるよう、グラフ化やデータの整理など、システムをもっと使いやすいようにしていこうと取り組んでいます。

 引き続き、司会でもある日比野新から「事業団介護ロボット取り組み報告と今後に向けて」と題し、現在進行中の取り組みについて説明がなされました。

作業療法科

上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGo-J【帝人ファーマ(株)】

 片麻痺患者の肩、肘関節等の随意性、関節可動域の改善を目的とします。自主訓練に使用し肩、肘、前腕機能に改善が見られました。

言語聴覚科

嚥下音集音装置ごっくんチェッカー【(株)ハッピーリス】

 飲み込む音を拡大、聴取可能にする機器。iPadと組み合わせて音声波形を目で確認することも可能。今年度はデータを収集し、嚥下速度、状態を確認して、機器の機能、ソフトウェアの検証を行います。

就労支援課

把持動作補助装置SEMGlove自立支援用【(株)エスケーエレクトロニクス】

 センサで負荷量を感知、握力を補助する機器。握力の発揮・維持が難しい人が対象。片麻痺の利用者1名に対し、両手で物を持ち運ぶ目的で、木片等を握って移す訓練を実施。改善が見られましたが、利用者の退所により終了しました。

 説明の後は、全体を通しての質疑応答が行われ、プライバシーについて問題になったことや課題について、また、ACSIVEを手軽に使えるようにしたものともいえる「aLQ by ACSIVE」についての質問が出るなど、活発な意見交換が行われました。
 終わりに、佐野明人教授から総評として、「各分野の専門家が一堂に会する機会は非常に貴重です。それぞれの立場でユーザーにもっとも良いことを考えていることが確認でき、こうした活動が継続していければ、それぞれの理解が深まり、次に新たなことを始める場合でも迅速にチームが組めることが期待できるのではないでしょうか。分野を超える横のつながりができることは、非常に有意義でありとても勉強になりました」との言葉をいただきました。
 最後に、名古屋市総合リハビリテーションセンター第1リハビリテーション部長 小川鉄男より「名古屋市総合リハビリテーションセンターという組織の特性でもありますが、規模がそれほど大きくなくほとんどの職員が顔見知りで互いに連携して仕事をしております。褒められて伸びるタイプの者が多いので、みなさまからのアドバイス、ご指導をいただきますよう、今後ともよろしくお願いします」と挨拶があり、連絡会は閉会となりました。