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特集

2019年4月、名古屋芸術大学音楽領域にウインドアカデミーコースが誕生

 2019年度、音楽領域に新たなコース、「ウインドアカデミーコース」が設置されることになりました。ウインドアカデミーってどんな意味?と思われる方もいらっしゃると思いますが、簡単にいえば”吹奏楽”。中学生、高校生には人気の部活動である吹奏楽ですが、それを専門的にしっかり学ぶためのコースとなります。これを機会に、吹奏楽が誌面をジャック。特集も学生も先生も、今回の名古屋芸大グループ通信は、吹奏楽オンパレード。吹奏楽に係わる人たちに聞く吹奏楽の魅力です。特集では、文字通り子供の頃や学生時代からずっと吹奏楽に係わり続けてきた吹奏楽の達人ともいえるお二人に、吹奏楽の魅力と新設されるウインドアカデミーコースについてお伺いしました。              

「吹奏楽、好きだった」で、終わらせない。

楽器に向き合い、多くの時間を費やしてきたあなたへ。名古屋芸術大学で、吹奏楽が大好きなあなたの、次なるステージが始まります。

さまざまな楽器の奏法を学ぶ

 木管・金管・打楽器の奏法、指揮について4年間かけて研究。集団レッスンで切磋琢磨しながらも個人の進度に合わせて学べます。

[演奏を学ぶ主な楽器]
木管(フルート、クラリネット、サックスなど)・金管(トランペット、ホルン、トロンボーンなど)・打楽器(ドラム、ティンパニーなど)

指導者・ディレクターとしての能力を身に付ける

 吹奏楽アンサンブルの基礎から学び始め楽曲の表現方法について研究しながらそれを指導する力を養っていきます。また、実際の現場で役立つ編曲についても学びます。

専門的な管楽器リペアを学ぶ

 各学年で半期ずつ楽器の修理とメンテナンスを学びます。将来、楽器業界や楽器販売店への就職時にも役立つ技術が身に付きます。

録音・音響技術の習得

 充実した設備の中、早い時期から現場を体験できます。レコーディングとPAの基本的な技術を身に付けるとともに、芸術的に優れたサウンドについて追究できます。

一般教養とボーダレスな芸術教育

 本学では、一般教養にも力を入れています。また、音楽領域だけではなく美術・デザインを横断的に学ぶことができるため、将来の可能性を大きく広げられます。

吹奏楽の魅力とウインドアカデミーコース設立の狙い

音楽領域主任 ファゴット
依田嘉明教授(写真右)

 ソリストとして、2013年セントラル愛知交響楽団とモーツァルトの協奏交響曲、2014年と2016年にウクライナ・チェルニーゴフフィルハーモニー交響楽団とR. シュトラウスの二重小協奏曲、ヴィヴァルディのファゴット協奏曲、2015年北名古屋シティ管弦楽団とウェーバーのファゴット協奏曲の演奏を行う。オーケストラの客演奏者や室内楽、また岐阜県交響楽団や大垣室内管弦楽団等のトレーナー、三重県立白子高校吹奏楽コース非常勤講師など、幅広く活躍中。これまでにファゴットを谷島卓、岡崎耕治、山畑馨、ローランド・スモール、ジョン・モスタード、またアフィニス夏の音楽祭にてフォスカー・テスマンの各氏に師事。

吹奏楽指導・コース主担  サクソフォーン
遠藤宏幸准教授(写真左)

 サクソフォーンを石渡悠史、岩本伸一、雲井雅人の各氏に師事、室内楽を、服部吉之、服部真理子の両氏に師事、指揮法を橋本久喜氏に師事。2001年岐阜メルサホール、2003年、2004年、2014年名古屋ザ・コンサートホールにおいてソロリサイタルを開催。2014年参加するアリオン・サクソフォン・カルテットとしてファーストアルバム「Arion’s Harp(FLCP-210027)」をリリース。サクソフォーン奏者として活動する傍ら、吹奏楽指導者としても多くのアマチュアバンドを指導。短期大学准教授を経て、アリオン・サクソフォン・カルテット、トリオ・ウィステリア各メンバー、ウインドアンサンブルGAJA(ガヤ)代表、ユニータ・デラ・サックス代表、ルロウブラスオルケスター(小牧市)常任指揮者。

吹奏楽は熱い!

吹奏楽の人気の高まりを感じます。全日本吹奏楽コンクールの広がりや高校吹奏楽部を舞台とした小説も人気です。吹奏楽部がアニメ化されるなんて隔世の感がありますね。

遠藤:“熱い”ですよね! 文科系なのに、体育会系というノリですね。ドラマチックな部分がきっとあるんだと思います。アニメになったり、テレビ番組で取り上げられたりするのも、吹奏楽のコンクールが、高校野球甲子園のように広まり、意外と地味じゃないんだなということを知ってもらえたのではないかと思います。最近では、甲子園での応援の演奏がすごく注目されていまして、ブラバン甲子園というイベントとCDのシリーズ(https://www.universal-music.co.jp/braban-koshien/)があります。吹奏楽も優秀で野球も優秀な学校が集まって演奏会といいますか、甲子園の応援の演奏をやるんです。見に来られるお客さんも、音楽会とは全然違うんですよね。普段、野球が好きで、甲子園で初めて吹奏楽のエル・クンバンチェロだとか、アフリカンシンフォニーだとか、こうした楽曲を知る。SNSとか、今時の情報量の流れ方です。吹奏楽関係じゃない人たちにも普及してきているなと感じます。
依田:僕の個人的な思いなのかもしれませんが、ひところよりも吹奏楽というのは落ち着いてきたと感じています。A編成(大編成 高校、大学では55名以内)で出ていたようなところがB編成(中編成、35名以内)になったり、少子化なんでしょうかね。それから、女性が増えてきましたね。コンクールの審査員に行っても男子を見かけることが減ってきました。チューバとパーカッションにいるだけで、あとはみんな女の子だったりしています。僕らが学生の頃は、男がすごく多かった時代なので、ちょっと変わってきたなと感じます。人数は減ったところもありますが、“熱さ”は変わらないですね。

以前 なら、野球の応援のなんかだと、吹奏楽部は嫌がったりしたものですよね?

遠藤:それが、実際、応援に行くと燃えるみたいですね!(笑) その熱がそのまま、吹奏楽の熱い部分になってます。僕は、そのままエネルギーを持って、大学に来てもらえれば一番いいのかなと思ってますよ。

男の子が少なくなったというところが気になりますね

遠藤:そうですよね。そこは問題ですね。
依田:チューバを女の子が吹いてたりしますからね。以前なら男子が担当するのがイメージでしたけどね。最近は女の子が圧倒的に多い。少しやっぱり少子化なんでしょうか。
遠藤:今は吹奏楽、女子高で力のあるバンドが多いです。
依田:今年も東海地区で、全国大会に行ったところには最近共学になったばかりの学校もありました。それまで女子校だったんですよね。
遠藤:福岡の精華女子高校というところだったり、女子校がすごく頑張ってますね。女性のほうが、真面目に取り組むというところもあるかとも思いますが……。
依田:粘りもあるのかなあ……、男の子だと、飽きっぽかったりしますしねえ。

名芸の吹奏楽は真面目!?

名古屋芸大の吹奏楽の特色みたいなものはありますか?

依田:どう?
遠藤:専任になってまだ 半年なんですが、合奏していると、ちょっと大人しいかなという感じはしていますね。すごく真面目なんですよね。冗談がいいにくい。前に立ってて、今ここで冗談をいっても絶対笑ってくれないだろうなと(笑)。まだ、僕もコミュニケーションが足りないのかも。非常に真剣に取り組んでいくれてますが、もうちょっと開放的になってくれたらいいなという感じを持ってます。
依田:真面目といったら真面目なのかもしれないですね。去年から名誉教授になられたヤン・ヴァン・デル・ローストさん、僕が名古屋芸大に務め始めた年からローストさんも係わり始めて、教員としては、たぶん同級生なんですよ。ローストさんは作曲家ですので、ご自分の作品をずっとやってこられて、CDもたくさん出ています。特色といったらそういうことをやる学校というのは、ほかにはなかったと思いますね。普通なら、録音は4年に1度とか、在学中に1回あるかなという程度だと思いますが、ローストさんは10年以上やっています。録音スタジオもあるし、そういう環境がそろっていたということもありますね。
遠藤:そういう経験があるから合奏に取り組む姿勢も、真面目というか、真剣なのかもしれませんね。レコーディングって本当にきついですからね。ミスできないというので、かなり精神的にも追い込まれます。
依田:朝9時に始まって夜9時までとか、ありましたからね。1曲2曲録るだけではなくアルバム1枚作るとなると、1日、2〜3曲はやります。その間ずっとミスというのは許されませんから。難しい曲になればなるほどミスはしやすくなりますし、長い曲であれば後半ボロボロになってきちゃいます。そんな中でも精神力を保ちながらやっている、そういう意味では鍛えられているのかもしれないですね。
遠藤:自分のミスでこのテイクが駄目になったらどうしよう、ってそんな感じですからね。
依田:しかも必ずDe Haskeっていうオランダのレーベルなんですが、De Haskeの社長がレコーディングに来ていましたから、とりわけ緊張感があります。そう思うと、結構な環境でやっていましたね。
遠藤:今年から僕も担当するようになって、これからまたカラーが変わっていくのかなと思っています。

部活を専門に!吹奏楽を広く学ぶ

さて、ウインドアカデミーコースについてです。まず、なぜ吹奏楽のコースを設置することになったんですか?

遠藤:弦管打との違いが大きいと思いますが、弦管打はどちらかというとプロフェッショナルな方向性が強いです。各専門のエキスパートを目指すという目的で、試験内容からそうなります。高校時代は、楽器をしっかり練習したり、レッスンを受けたりしてきた人が、この先も専門性を付けて勉強していくというコースになります。
それにくらべて、ウインドアカデミーのほうは、もっと広い範囲といいますか、吹奏楽全体を学べる、指揮も含めた音楽の全体的な部分を学べるようにしたコースです。学習内容にも多様性があり、自分の専門の楽器だけでなく、さまざまな楽器をやったり、吹奏楽の指導をやったり、吹奏楽のすべてを学びましょうという考えです。いろいろやりたいと考えている人には合っているのではないかと思います。

楽器もいろいろやるんですか?

遠藤:そうです。
依田:広く学べるといういいかたが合うのかなと思います。とにかく入り口よりも出口のことを考えたというのが、まずあります。ここで学んだことは、いろいろな分野に生かせると思います。例えば、カリキュラムの内容になるんですが、リペア(楽器修理・メンテナンス)があったり、指揮法があったり、作曲、編曲、指導もあります。例えばリペアを学んでいれば、もちろんリペアは専門的に相当に深い世界がありますが、ある程度のことができるようになれば楽器メーカーや販売店なんかにも就職することが可能でしょうし、指導する立場になれば楽器のことを知っていることがとても役に立つはずです。
もちろん楽器の演奏もやりますのでプロを目指すこともできる、それから指揮ができれば指揮者になることも可能になるし、指導ができれば学校の先生・吹奏楽の指導者にもなれる。そういった多岐にわたった将来が想定できるのかなと考えています。今までだと、遠藤先生がいわれたように、一つのことを突き詰めてやっていくわけです。僕自身がそうなんですが、例えば、サックスのことがわかるかというと指使い一つわからないくらいで、自分の楽器のことは知っていても人の楽器のことは何も知らない。そういうことではなくすべての楽器を勉強していこうというカリキュラムを考えています。一通りの楽器を学ぼうと。
遠藤:リペアも、楽器店も、指揮者も、指導者も、すべての楽器を把握していないとなかなかできないことです。なのでそこを勉強してもらいたいなというのがあります。
ウインドアカデミーコースを作るに至ったもうひとつの要因として、卒業後、一般職も含めて考えていきたいんです。一般職に就きながらライフワークとして吹奏楽を楽しむという人もいますし、今後、働き方も変わっていくと思います。例えば、サラリーマンをやりながら外部講師をやることや、吹奏楽のバンドに入ってその中で指導的な立場に立つことなど、あるいは中学校や高校に教えに行くということも、これからは機会が増えてくると考えています。公立中学や高校でも部活を外部講師で補うという話が出てきています。音大に行ったから音楽家になるとか、なぜ音大に行ったのに音楽家にならないのか、こういう話はよくあるのですが、僕は、法学部に行った人は全員弁護士になるわけでもないし、ここで学んだことが人間力のアップになって、それを社会へ持っていってもらえばいいと考えています。
なるべく好きなことを勉強して欲しいんです。もちろん専門的にサックスならサックスだけを掘り下げる、こういうのもやってもらえばいいし、吹奏楽が好きで聞くことも好きだし、演奏することも好きだ、こういう人たちにもっとさまざまな視点で吹奏楽を勉強してもらえるようにしたということです。

ファンデーション的な意味合いもありますね?

依田:そうですね。ファンデーションの積み重ねみたいなものかなというイメージはありますね。しっかりベースができていないとその上というのはできないですからね。僕らの構想の中には、3年生になって、もしも特定の専門分野に舵を切りたい、例えば指揮者になりたい、リペアをやりたい、そうなったときにそれを専門的にできるようなカリキュラムの組み方をしようと思っています。ちょっと意味合いが違うのかもしれませんが、デザイン領域はそうやっていますよね。音楽総合コースもそれに近い形でやってきましたが、今の学生の傾向としては総合コースのままで卒業していくパターンが多くなってきました。ウインドアカデミーコースも、ひょっとしたら3年になってもウインドアカデミーのままでいいよという人が多いかもしれないと思っています。こればかりは始まってみないことにわかりません。ですので、そのあたりは臨機応変に、自由に希望に添った形がとれるような仕組みを考えておこうと思っています。

吹奏楽は人間力が高い!

将来、いろいろな方向が考えられるコースだということですね。もちろん音楽があってですが。

遠藤:いろんな意味で、人間力の高い子が吹奏楽部には多いんですよ。コミュニケーション能力が高いとか、一つのことに集中できる力があるとか。来年度から客員教授に来ていただく大内孝夫先生が「音大卒は武器になる」という本を書かれているんです。音大生や管楽器をやっていた学生たちには力があり、それが社会の力になるということを訴えていきたいと個人的には考えているんです。

その本には、どんなことが書いてあるんですか? 人間力が高くなるんですか!? 

遠藤:音大生は、大学生なのに!?あまり遊ばないんですよね。練習すること、一つのことに集中する力ですね。レッスンは個人レッスンが基本ですが、今の20代の学生たちっていうのは大人と一対一で接する機会が案外少ないんですよね。それでレッスンを受けてる音大生はコミュニケーション能力が高い。試験、コンクール、演奏会、それに向かってタイムマネージメントができる、こういった内容が書かれているんです。

たしかに演奏会という目的に向かってやっていく、もちろん個人の技量も磨かなければいけないし、バンドなので協調性も必要、人間関係も複雑になっていくし、そうかもしれないですね。

遠藤:それから根気がいいんですよね。もともと大内先生は銀行員をやっていらっしゃった方なんです。その大内先生がおっしゃるには、銀行員にすごく適しているというんですよね(笑)。一つのことを確実にやり遂げる。真面目で、コツコツやれるからなんですって。

-本当ですか〜(笑)

依田:吹奏楽は上下関係もきちっとしていますよ。僕は三重県の白子高校に教えに行っていますが、普通科の中に文化教養(吹奏楽)コースという吹奏楽のコースがあるんですよ。吹奏楽に完全に特化したというわけでもないみたいなんですが、カリキュラムの中に演奏や個人レッスンがあるんです。以前には、学校が荒れた時期もあったようなんですが、吹奏楽部の生徒だけは礼儀正しかったそうです。挨拶がしっかりできる、年上の人に対する態度とかコミュニケーションとか、そういうことがきちっとしている。それで、吹奏楽コースを立ち上げたようなところがあるらしいです。「音大卒は武器になる」、たしかにそういうところもあるのかなと思います。状況をわきまえてきちっとできる、そんなところがあるのではないかと思います。

吹奏楽の基本は礼儀作法!?

なんでしょう、いわゆる演奏家や音楽家のイメージって、一般的には自分本位の芸術家みたいな、ちょっとわがままなイメージがあると思いますが、吹奏楽は真逆のイメージですね。

依田:クラシックの人たちも徹底的にたたき込まれますね。特に、僕は大学に入ったときにすごく実感しました。最初にいわれたのが、挨拶をきちっとしろです。先輩にあったらとにかく、おはようございます、失礼します、きちっといえと先輩から教わりました。
遠藤:今の時代はないですけど、昔はやっぱり飲み会がすごくって、おそらく一般大学の体育会みたいな飲み会だったのではないかと思います。楽器にもよるんですけど(笑)
依田:特に金管楽器はひどい(笑)
遠藤:後輩を育てるというか、昔でいうところのそういう感じがありますね。

オーケストラってほかの楽器もやっぱりそうなんですか?

依田:弦楽器はまた別の世界があるんですよ。
遠藤:金管のほうがひどいですよ(笑)
依田:一つ上の先輩でもいまだに敬語ですよ、僕ら。タメ口なんてとてもじゃないですけど駄目ですね。そんなふうに、たたき込まれているもんですよ。ただ、普通に企業に入ったら当たり前ですよね。

たしかにそうですね。

遠藤:ちゃんとみんな敬語をしゃべれますよね。
依田:そうやって礼儀正しくすることは、吹奏楽の伝統として今も残ってるので、ちゃんとできるんだと思いますよ。

やりたいことができる、それがウインドアカデミー

ウインドアカデミーコースではそんなところも継承されているということですね。

遠藤:カリキュラムについては、これから固めていくところなんですが、いろんなことができるように考えています。音大系に足りないのは、音大生は卒業してすぐオーケストラに入るとか就職するというルートをとらないかぎり、一旦フリーになります。そうしたとき、セルフプロデュースや経営的なこと、仕事をもらうための営業など、そういうことが全然わからないんですよね。社会に出たら、ギャラというのはこういうものだに始まり、自分を売り込んでいくようなことも必要です。それも含めて、学んでもらいたいなと思っています。そういう意味では、社会性とかマネージメントなんかも勉強できるようにしたいなと思っています。
依田:リペアが入ることも大きいのかなと思います。外部の方に説明したときにもその部分の説明を多く求められますね。
遠藤:それから指揮法ですね。指導法的な部分でもあります。じつはもともと指揮コースを作ろうという話がありまして、そこから派生してウインドアカデミーコースになったという経緯があります。ですので先ほど説明したように、3年以降で指揮者を希望した場合、本気で取り組めるような環境を、整えようと思っています。
依田:指揮コースを作るという構想ですが、弦管打コース、声楽家コースを卒業した者2人が過去に研究生で指揮を学んでいたという事例があるんです。その2人のうち1人は、本学に指揮コースがないため、別の大学の指揮コースに入り直しました。もう1人は、本学卒業後指揮活動を実際にやっています。そういう学生が出てきたので、それだったらせっかくなのでしっかりしたものをやろうという構想があったんです。でも、遠藤先生が話されたように、実際指揮法を勉強できるようにしてもやはり少数精鋭ということになります。どこも指揮科のある学校では、多くても1学年で5人ほど、指揮コースがなくなってしまった学校もあるんですよね。ただ、東海エリアにおいては指揮科がある学校はなく、専門的に学べるところは全国でもごくわずかです。ですので、そういうことを勉強できる場があることは意義深いことだなとは思っているんです。そこで学んだことというのは、しっかりと自分の中に蓄積されると思いますし、アピールできるポイントになるんじゃないかと思っています。

カリキュラムだと編曲も面白いところですよね?

遠藤:客員教授で来ていただく鈴木英史先生というのは、オーケストラの曲を吹奏楽用にアレンジするわけですが、例えばバイオリンパートを吹奏楽の楽器にそのまま割り当てるのではなく、一度、楽曲をすべて崩して吹奏楽の楽器の音域に合わせて再編成するような手法です。無理のない音が出るというか、響きやすいというか、吹奏楽をとてもよく理解されている先生で指導も素晴らしいし、ぜひにとお願いしました。ポップス系のアレンジもできた方がいいと思うので、吹奏楽に関するポップスは、福井にある武生商業高校の植田薫先生にも講義をしてもらおうと予定しています。
好きなことを勉強すれば絶対スキルは上がります。そこでエネルギーを出してもらい、そのエネルギーをそのまま持って社会に出てもらえば、それが一番理想だと思います。
依田:学生、一人ひとりが持っている熱量が違うと思うので、その人に合わせて、指揮者なら指揮者、リペアならリペアと、一人ひとりに合わせられるように、やっていけたら一番いいんではないのかと思っています。

名誉教授
ヤン・ヴァン デル ロースト

 ルーヴェン(ベルギー)のレメンス音楽院で徹底した音楽教育を受け、トロンボーン、音楽史、音楽教育の3つの学位を取得。ヘントとアントワープの王立音楽院で研究を続け、作曲と指揮の学位を取得。作品のジャンルとスタイルは多岐にわたり、交響曲、協奏曲、オラトリオ、児童歌劇、カンタータ、吹奏楽曲、器楽ソロ曲などを作曲。また、ベルギー、オランダ、スイス、イタリア、アメリカ、日本、スペイン、フランス、シンガポール、オーストリア、カナダ、ノルウェー、ドイツ、ブラジル、フィンランド、ルクセンブルク、ハンガリー、コロンビア、クロアチアなどの諸国からの委嘱作品も手がけている。作品の多くは各国でラジオやテレビで放送され、世界中の著名な演奏家によって演奏、録音されている。審査員や講師、客演指揮者としての要望も多く、世界四大陸の45ヵ国以上を訪れて活動している。現在、レメンス音楽院教授、名古屋芸術大学名誉教授。

キャリア教育
大内 孝夫

慶應義塾大学経済学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。証券部次長、仙台営業部副部長、いわき支店長などを経て、2013年より武蔵野音楽大学就職課勤務、会計学/キャリアデザイン講師兼務。著作に『大学就職課発!!目からウロコの就活術』、『「音大卒」は武器になる』、『「音大卒」の戦い方』、『3日でわかる<銀行>業界』など。

9/29(土)全学オープンキャンパス 講演会
「音楽の学び社会でどう生かすか -名古屋芸術大学卒業後の進路について-」

 芸大の卒業生こそ、社会に対して大きな価値を持っています。社会の課題として、答えのない問題に答えを探さなければならないということがあり、正解を求めるだけの「事実教育」では応えられず、顧客が求めることの価値を感じられる「価値教育」が非常に大事な時代になってきている、顧客価値を感じられる人間になることが芸大で養われます。
 音楽を学ぶことで身に付くこととして、企業の若い世代に必要な「社会人基礎力」(コミュニケーション力、時間管理、忍耐力、丁寧さ、礼儀正しさ)、中堅世代としては「管理能力・総合力(全体を俯瞰する力、プロジェクト管理、ストレス耐性、孤独への耐性)、世代にかかわらず身に付くこととして記憶力、性差のない実力主義、歴史・文化への理解などがあり、音楽教育でこそ、現在求められている力が身に付きます。
 音楽を学ぶことは社会で生きていく上でも十分な力がつき、音大生の進路は考えている以上に幅広くいろいろな可能性があります。4年間はチャンスをつかむ期間であり、ぜひチャンスをつかんで欲しいと思います。

指揮
高谷 光信

 指揮を小松一彦、伊吹新一、田中良和、藏野雅彦、辻井清幸、V.プラソロフ、E.ドゥーシェンコ、N.スーカッチ、に師事。現在までに東京混声合唱団、Osaka Shion Wind Orchestra、大阪交響楽団、兵庫芸術センター管弦楽団、セントラル愛知交響楽団、瀬戸フィルハーモニー交響楽団、東京室内オーケストラ、愛知室内オーケストラ、神戸市室内合奏団などを指揮。 《題名のない音楽会》(Osaka Shion Wind Orchestra2015年11月23日放送)に出演。大阪芸術大学演奏学科 客員准教授、名古屋芸術大学、武庫川女子大学音楽学部、京都市立芸術大学音楽学部音楽教育研究会、各非常勤講師。第16回京都芸術祭京都市長賞受賞。2012年7月ウクライナチェルニーゴフ州文化功労賞受賞。 現在ウクライナ・チェルニーゴフフィルハーモニー交響楽団常任指揮者。

作編曲・吹奏楽指導 特別客員教授 (就任予定)
鈴木 英史

 安宅賞、第11回日本管打・吹奏楽アカデミー賞(作編曲部門)受賞、外務省在外公館長表彰授与。 国民体育大会(石川、山形)ねんりんぴっく(石川)式典音楽、国民文化祭創作音楽(鳥取、秋田)等を担当。 シカゴミッドウエストクリニック、WASBE、日スリランカ国交60周年記念事業委嘱、台湾国際音楽祭課題曲委嘱など、海外でも高い評価を受ける。作編曲活動を中心に、指揮、CD企画、講習、審査、音楽誌への執筆など幅広く活躍。日本音楽著作権協会正会員、尚美ミュージックカレッジ専門学校特別講師。主な作品:ライフ・ヴァリエーションズ、カントゥス・ソナーレ、鳳凰-仁愛鳥譜、大いなる約束の大地〜チンギスハーン、信長-ルネサンスの光芒、多数の編曲(喜歌劇セレクション、ニュー・サウンズ・イン・ブラス)等。作品集CD:「チャルダッシュ・カントゥス」「サーカスの女王・セルゲイモンタージュ」「光の祭典/チンギス・ハーン」。2019年4月名古屋芸術大学ウインドアカデミーコース 特別客員教授就任予定

福井県立武生商業高等学校 吹奏楽部顧問
植田 薫

 小学校時代よりトランペットに親しみ、藤島高校で全日本吹奏楽コンクールに出場。成城大学では軽音楽部で活動する他、辻仁成、桑名正博らのバンドに参加。福井県立武生東高校の開校時に赴任し、吹奏楽部を創部。19年間で全国大会に8回出場。武生商業高に異動後、小編成部門で中部日本大会、東日本大会1位を経て大編成に移行、全国大会に5年連続で出場中。一方Black Musicをベースとしたオリジナルの編曲、演出で「日本一ファンキーな吹奏楽指導者」として全国から講習会や演奏会に招かれている。福井と東京のバンドでヴォーカリスト、トークボックス/フリューゲルホルン奏者としても活躍中。全日本吹奏楽連盟理事。

田中範康副学長
依田嘉明教授
9/29(土)の全学オープンキャンパスで「ウインドアカデミーコース」の説明会が行われました

 9/29(土)の全学オープンキャンパスで、来年度から新設される「ウインドアカデミーコース」の説明会、楽器ごと(フルート、クラリネット、ファゴット、サックス、トランペット等)のワンポイントレッスン、大内孝夫氏による講演会「音楽の学び社会でどう生かすか -名古屋芸術大学卒業後の進路について-」、ヤン・ヴァン デル ロースト名誉教授による「吹奏楽クリニック&コンサート」など、盛りだくさんのイベントが行われました。
 音楽領域全体説明では、田中範康副学長から音楽領域が目指すものや音楽界と大学教育の在り方、ウインドアカデミーコースの背景などを説明がありました。
 ウインドアカデミーコースの説明会では、依田嘉明教授がコースの概要とカリキュラムの特徴、卒業後の進路など紹介しました。大内孝夫氏による講演会「音楽の学び社会でどう生かすか -名古屋芸術大学卒業後の進路について-」では、音楽を通じて学ぶこと、音大で身に付くスキルなどは、あらゆる分野に応用できるものであるという内容を、さまざまなデータや具体的な事例をもとに説明する講演で、訪れた高校生や学生、さらに保護者の方々も、真剣な表情で聞き入っている姿が印象的でした。
 ヤン・ヴァン デル ロースト名誉教授による「吹奏楽クリニック&コンサート」では、始まりにコンサートマーチ「アーセナル」を学生が演奏、クリニックでは、ワンポイントクリニックに訪れた高校生も楽器を持って加わり150名の大編成で、「カンタベリー・コラール」を演奏しました。貴重なクリニックに、高校生たちも真剣に取り組んでいる姿が見られました。150名の大編成での演奏は荘厳で、非常に素晴らしいものとなりました。